リップル(XRP)は、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など主要な暗号資産と比較して中央集権的な側面を持つと批判されることがあります。
実際、リップル社は、米国の非上場の営利企業であるため、組織運営も当然に中央集権的です。さらに、リップル社がXRPの大部分を保有し、ネットワークの運営に関与していることも中央集権的です。しかし、この中央集権的な仕組みにはメリットもあり、必ずしもデメリットだけではありません。
以下に、リップルの中央集権性がもたらす利点と欠点を整理します。
1. リップルの中央集権性とは?
リップルが中央集権的とされる理由は、以下の要素によります。
XRPの発行と管理
XRPはビットコインのようにマイニングで発行されるのではなく、1000億XRPがすでに発行済み。
そのうち、リップル社が一時期60%を保有しており、現在も約50%を管理(エスクローを通じて市場に放出)。
コンセンサスアルゴリズム(RPCA)の仕組み
XRP Ledgerは、独自の合意形成アルゴリズム(RPCA) を使用し、マイニングを必要としない。
取引の承認には、信頼されたバリデーター(リップル社が推奨するノード)が80%以上の合意を形成する必要がある。
これは、完全な分散型ネットワークではなく、リップル社が一定のコントロールを持つ構造になっている。
2. 中央集権的であることのメリット
中央集権的であることは、メリットもあります。一般に組織運営における意思決定スピードなどは、中央集権が優位とされるほか、
機能面では下記のメリットがあります。
① 取引スピードとコストの最適化
リップルの取引は3~5秒で完了し、手数料はほぼゼロ(0.00001XRP)。
ビットコインのようなマイニング(PoW)が不要で、エネルギー消費が少ない。
◎ポイント
リップル社がネットワークを管理しているため、取引の最適化が容易であり、高速かつ低コストで送金が可能。
② セキュリティの向上
ビットコインやイーサリアムでは、ネットワーク攻撃(51%攻撃*)のリスクが存在する。
(*51% 攻撃とは悪意のあるグループまたは個人により、ネットワーク全体の採掘速度の 51%(50% 以上)を支配し、不正な取引を行うこと。)
リップルは、特定のバリデーターが取引を承認する仕組みのため、悪意ある攻撃が成功しにくい。
◎ ポイント
リップル社がネットワークの安定性を管理することで、安全性を確保できる。
③ 規制遵守(コンプライアンス)への適応
金融機関との提携には規制遵守(KYC/AML)が必須。
リップル社が運営を管理することで、法規制に迅速に対応できる。
◎ ポイント
銀行や政府との連携がしやすく、採用が進みやすい(SWIFTの代替として期待)。
④ 供給量のコントロール
ビットコインは供給量が2100万枚に制限されているが、マイニングの遅延による供給不足が発生することもある。
一方、リップルはすでに1000億XRPが発行されており、市場供給を管理可能。
◎ポイント
価格の急変動を抑えるために、XRPの供給を調整できる(投機的な動きに対抗しやすい)。
3. 中央集権的であることのデメリット
① 分散性の欠如(管理主体への依存)
XRPの供給や管理がリップル社に大きく依存しているため、リップル社に問題が発生した場合、XRP全体の信用が揺らぐ可能性がある。
例)SEC(米国証券取引委員会)の訴訟により、XRPの価格が大きく下落した(2020年12月)。
● リスク
リップル社の規制・経営リスクがXRP全体に影響を及ぼす。
② 「分散型金融(DeFi)」の理念に反する
ビットコインやイーサリアムなど暗号資産の大半は、非中央集権(Decentralized)を重視し、政府や企業の影響を受けにくい設計である。
一方、XRPは中央管理者が存在するため、「金融の自由」を求める投資家から敬遠される面も持ち合わせている。
● リスク
「ブロックチェーンの本来の理念である分散型であること」に反するという批判を受ける。
③ 政府・規制当局による介入のリスク
中央集権的であるが故にXRPが証券(Security)に分類される可能性があり、規制の影響を受けやすい。
SEC訴訟のような規制リスクが高いため、米国以外の他国でも取り扱いに制限がかかる可能性は残る。
●リスク
金融規制の強化がXRPの取引や流動性を制限する可能性がある。
④ 供給のコントロールによる価格操作の懸念
リップル社が大量のXRPを保有しているため、「供給を操作して価格をコントロールできるのでは?」という懸念がある。
事実として、リップル社はXRPの売却を行っており、「価格操作ではないか?」という批判もある。
●リスク
→ 大口保有者(リップル社)が市場に影響を与える可能性がある。
4. 結論:中央集権性はメリットかデメリットか?
観点 | メリット | デメリット |
取引速度 | 3~5秒で高速決済 | – |
手数料 | ほぼゼロ | – |
セキュリティ | 51%攻撃リスクが低い | 中央管理者への依存 |
規制遵守 | 金融機関と連携しやすい | 規制リスク(SEC訴訟など) |
供給管理 | 価格安定性が高い | 価格操作の懸念 |
分散性 | – | 分散型金融(DeFi)の理念に反する |
結論
金融機関・銀行にとってはメリットが大きい
安定性・高速性・規制対応の容易さが求められるため、中央管理された仕組みが有利。
分散型金融(DeFi)を求める投資家にはデメリット
政府の規制・中央集権リスクが嫌われ、他の暗号資産(BTCやETH)を選ぶ投資家も多い。
したがって、リップルの中央集権的な特性は、金融機関向けの実用性に適している一方、ブロックチェーンの自由・分散性を重視する層には不向きであると言えます。
リップル(XRP)の特徴をビットコインなど主要な暗号資産との比較で理解する
追加情報 リップルCEOが、同社の中央集権性(分散性の欠如)に対して、コメント
2025年5月、SNS(X)上で、リップル・XRPの分散性に疑問を呈する投稿が相次ぎました。特に中央集権的なリーダーが存在しないビットコイン(BTC)と比較し、リップル社CEOの存在がXRPの分散性と矛盾するのではないかという指摘でした。
これに対し、リップル社の最高技術責任者(CTO)であるデビッド・シュワルツ氏がXで、下記を投稿しました。
Garlinghouse is the CEO of Ripple, a company. XRP has no issuer — all the XRP that will ever exist was created when the ledger was created. Unlike most other blockchains, XRPL has no rivalrous features, so the ledger itself can’t really do the initial distribution beyond letting…
— David ‘JoelKatz’ Schwartz (@JoelKatz) May 27, 2025
日本語訳
「今後存在するXRPはすべて、台帳が作成された時点で作成されます。他のほとんどのブロックチェーンとは異なり、XRPLには競合する機能がないため、台帳自体は、誰もが好きなだけXRPを取得できるようにする以外に、初期配分を行うことはできません。
XRPLが分散化されているかどうかを考えるにあたっては、なぜ台帳が分散化されているかどうかを気にするのか、少し考えてみることをお勧めします。何が起こると確信したいのか、何が起きないと確信したいのかを自問自答してみてください。そして、起こってほしくないことが起こるために、あるいは起こってほしいことが起こらないためには何が必要なのかを考えてみましょう。
そうすることで、定義にとらわれずに、分散化の程度について効果的に考えることができるでしょう。」