リップル(Ripple)によるヒドゥンロード(Hidden Road)買収、サークル(Circle)買収提案の動向まとめ

リップルは、2025年4月、ヒドゥンロードを買収、5月にはサークルに買収提案を行いました。一連の動きについて、その背景やリップルの狙いをまとめます。

前提整理

ヒドゥンロード(Hidden Road)とは

Hidden Roadは、FX、デジタル資産、デリバティブ、スワップ、債券といった資産クラスの清算、プライムブローカレッジ(*)、ファイナンスサービスを提供する米国のブローカレッジ企業(**)です。年間3兆ドル以上の取引をクリアリングしており、300以上の機関投資家を顧客に抱えています。
*プライムブローカレッジ:ヘッジファンドや機関投資家に対して、取引執行、カストディ、証券貸借、資金調達、レポーティングなど、包括的な金融サービスを提供すること
**ブローカレッジ企業とは、売買取引の仲介業務を行う企業を指します。主に金融業界や不動産業界で、顧客の注文に基づいて取引を代行したり、取引の仲介を行ったりする会社を指します。

サークル(Circle)とは

サークル(Circle)は、米ドルに連動するステーブルコイン(*3)「USDコイン(USDC)」を発行している企業です。
*3ステーブルコインとは、ステーブルコインとは、米ドルなどの法定通貨やコモディティなどの資産価格に連動するように設計された暗号資産の一種です。
価格変動が少ないように設計されているため、決済手段や価値保存手段として利用されます。

1. Hidden Roadの買収

2025年4月8日、リップルはプライムブローカーのHidden Roadを12.5億ドル(約1,900億円)で買収すると発表。これは仮想通貨業界で過去最大級の取引の一つで、リップルは機関投資家向けサービスの拡大を目指しています。(リップル、12.5億ドルでプライムブローカーHidden Road買収

Hidden Roadは、年間3兆ドル以上の取引を処理し、300以上の機関投資家を顧客に持つ急成長企業。買収後、Hidden Roadはリップルのステーブルコイン「RLUSD」をプライムブローカレッジ商品の担保として活用し、XRP Ledgerを決済インフラに統合する計画です。これにより、従来数時間かかっていた決済が数分に短縮される可能性があります。

リップルのCTOデイビッド・シュワルツ氏は、この買収を「XRP LedgerとXRPにとって決定的な瞬間」と評し、機関向けユースケースの拡大を強調。
買収により、リップルは世界最大の非銀行系プライムブローカーとなり、伝統金融(TradFi)と分散型金融(DeFi)の融合を加速させる狙いです。

2. Circleへの買収提案

2025年4月末、リップルはステーブルコインUSDCを発行するCircleに対し、40億~50億ドルの買収提案を行いましたが、「金額が低すぎる」として拒否されました。この提案は、Circleが米国でIPO(新規株式公開)を申請した直後に行われたもので、リップルのステーブルコイン市場での影響力強化を狙った動きとみられます。 (リップル、ステーブルコイン発行企業サークルに最大50億ドルの買収提案するも拒否される)

一部のX投稿では、リップルが提案額を200億ドルに引き上げたとの噂が流れていますが、信頼できる情報源による裏付けはなく、憶測の域を出ません。
Circleの拒否は、2022年の企業評価額90億ドルを上回る価値を主張する姿勢を反映しており、リップルのステーブルコイン戦略に不確実性を投げかけています。

3. ステーブルコインRLUSDの展開

リップルは2024年12月に機関投資家向けステーブルコインRipple USD(RLUSD)をローンチ。Hidden Roadの買収を通じて、RLUSDはデジタル資産と伝統市場間のクロスマージニングを可能にする初のステーブルコインとして位置づけられています。
RLUSDはRipple Paymentsに統合され、金融機関が現地通貨での支払いや暗号資産エコシステムへのアクセスに利用可能。時価総額は3億ドルを超えています。

4. SECとの訴訟進展

2020年から続く米証券取引委員会(SEC)との訴訟では、2024年8月にリップルが1億2,500万ドルの賠償責任を負う判決が下されました。2025年3月、SECは控訴を取り下げる意向を示し、リップルは和解金5,000万ドルを支払う予定。これにより、規制面での不確実性が一部解消され、事業拡大に追い風となっています。

5. リップルのその他の取り組み リップルはRWA(現実世界資産)のトークン化に注力。2025年1月、Ondoの「OUSG」をXRP Ledger上で提供すると発表し、トークン化市場への参入を強化。 アフリカ9カ国での国際送金サービス拡大のため、Chipper Cashと提携。 XRPの価格は2025年1月に3.40ドルの高値を記録したものの、その後46%下落。5月時点で約323円(2.30ドル前後)で推移しています。 []

補足1 Hidden Roadの最近の動向

Hidden Roadは、仮想通貨と外国為替に特化したプライムブローカレッジ企業で、ヘッジファンドや機関投資家向けに取引執行、カストディ、融資などを提供しています。以下は最近の動向です:

1. リップルによる買収

前述の通り、2025年4月にリップルが12.5億ドルで買収。Hidden Roadはリップルの技術(RLUSDやXRP Ledger)を統合し、決済効率の向上やコスト削減を目指します。創業者マーク・アッシュ氏は買収後もリップル内でプライムブローカー業務を率います。

FINRA認可の取得

2025年4月17日、Hidden Roadの完全子会社(Hidden Road Partners CIV US LLC)が米金融取引業規制機構(FINRA)からブローカーディーラー認可を取得。これにより、債券などの固定収入資産に関する規制準拠の金融サービスを拡大し、特にプライムブローカレッジプラットフォームの強化を図っています。

Hidden Roadの市場でのポジション

Hidden Roadは2024年に3兆ドル相当の資金移動を仲介し、1日あたり100億ドル以上の取引を清算。300以上の機関投資家顧客を抱え、FalconXやCoinbase Primeと競合しています。リップルとの連携により、伝統金融とデジタル資産の橋渡し役としての役割が期待されています。

補足2 Circleの最近の動向

1. リップルからの買収提案の拒否

2025年4月末、リップルから40億~50億ドルの買収提案を受けたが、Circleは「金額が低すぎる」として拒否。2022年の評価額90億ドルを基準に、Circleはより高い価値を主張しています。
この提案は、Circleが米国でのIPO申請を行った直後に行われたため、リップルがIPO前の買収を狙った戦略とみられます。

2. IPOの準備

Circleは2025年初頭に米国での新規株式公開(IPO)を申請。公開企業となることで、規制監視や法的保護が強化されるため、買収が難しくなる可能性があります。IPO申請は、ステーブルコイン市場での競争力強化と、USDCのグローバルな採用拡大を目指す戦略の一環とされています。

3. USDCの市場ポジション

USDCはテザー(USDT)に次ぐ世界第2位のステーブルコインで、信頼性と規制準拠を強みに機関投資家やDeFiでの採用が進んでいます。Circleの拒否姿勢は、USDCの市場価値と成長見通しへの自信を反映しています。

まとめ

リップルは、Hidden Road買収を通じて機関投資家向けサービスを強化し、RLUSDとXRP Ledgerを活用して伝統金融とDeFiの融合を推進。Circle買収の失敗はステーブルコイン戦略に一時的な不確実性をもたらしたが、SEC訴訟の進展やRWAトークン化への注力により、成長軌道を維持しています。
Hidden Roadは、リップルとの統合とFINRA認可により、固定収入資産やデジタル資産のプライムブローカレッジで競争力を強化。機関投資家の需要に応えるインフラ構築を加速させています。
Circleは、リップルの買収提案を拒否し、IPOを通じて独立性を維持する戦略を選択。USDCの市場シェア拡大と規制対応力を背景に、ステーブルコイン市場での主導的地位を狙っています。

リップルの積極的な戦略は、仮想通貨業界の成熟と機関投資家の参入を加速させる一方、Circleのような競合との競争は今後も続くでしょう。
XRPやUSDCの価格動向、規制環境の変化、IPOの進捗などは、今後の注目ポイントです。

※価格や市場データは2025年5月5日時点の情報に基づきました。

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